短鎖脂肪酸不足と大腸劣化
短鎖脂肪酸不足が引き起こす大腸劣化
大腸の中では、腸内細菌により絶えず「発酵」や「腐敗」が起こっています。発酵も腐敗も、細菌が食物を分解・変化させて新たな物質をつくり出す現象ですが、私たちに有益なら発酵、有害なら腐敗と呼ばれます。 善玉菌は食物繊維などを食べて発酵し、「短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)」という体に良い働きをするスーパー物質を産生します。 一方、悪玉菌はたんぱく質や脂肪を食べて腐敗し、有害物質を生み出します☆25, 26。悪玉菌が優勢になり、発酵よりも腐敗が多くなると、短鎖脂肪酸が不足し有害物質が増えて、大腸劣化を引き起こします。

大腸だけにとどまらない!大腸劣化が全身トラブルへ
食物繊維不足やたんぱく質・脂質の過剰摂取などの理由で、腸内フローラのバランスが崩れ悪玉菌が優勢になると、大腸劣化を引き起こします。大腸劣化は大腸のトラブルだけに留まりません。 悪玉菌によって作り出された有害物質は腸壁の血管から、血流にのって全身へと広がりさまざまな場所で炎症などを引き起こします。 大腸劣化が肥満☆25, 26、感染症☆33やアレルギー☆32、糖尿病や心疾患☆27, 28, 29、がん☆22, 23, 24、うつや認知症☆20, 24, 30, 31といった病気のリスクを上げると言う報告もなされています☆3。※ 大腸劣化はもちろん大腸自体の健康も脅かします。近年、日本人に大腸の病気が多くなっており、お腹の痛みを伴って下痢や便秘などお通じの異常が続く過敏性腸症候群は、 日本人のなんと10人に1人がかかっていると言われており、特に若者に急増中です。また、大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病などの腸疾患も年々増加し続けています。

食の習慣・トレンドの変化がもたらす大腸劣化——食物繊維不足が深刻
人々の健康と密接な関わりのある大腸劣化は、腸内細菌の総量が著しく減少したり、腸内フローラのバランスが崩れるなど腸内フローラの異常(「ディスバイオシス」と呼ばれます)により悪玉菌優勢の腸内環境になることで起こります。 現代日本人の大腸が劣化する要因としては、ストレスや運動不足、食生活の乱れなどが挙げられますが、中でも食習慣・トレンドの変化は大きく影響を与えていると考えられます。 ダイエットなどのため、糖質制限を行い炭水化物の摂取を過剰に抑えたり、タンパク質摂取のため過度にお肉中心の食生活をすることで悪玉菌優勢の腸内環境をつくり、大腸劣化のリスクを高めます。 また、現代日本人の食生活は昔から食べられていた玄米や大麦が白米に変わり、食物繊維不足が深刻です。 国立がん研究センターの研究チームは、日本人を対象とした研究で、食物繊維を多くとっている人はそうでない人に比べて、死亡のリスクが約2割下がると報告しています☆21。
